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 「廃墟と恋人たち」
 
かさこそと 音をたてて 忍び込むのは誰だ
すっかり裸となった ぶな林が 風に揺れている

 

廃墟では 時々 プロモーションビデオ撮影が 行なわれ

若者たちの 楽しい音楽が 風にのって 流れていった

 

音楽とともに 映像を逆戻ししてみよう

 

遠く 遠く あの光まで届いてほしい
ひとりぼっちが切ない夜 星をさがしている
あした きみがいなきゃ困る あの光まで届いてほしい

 

もう 昔のように 不安になったりしない
だまって おれについてこいなんて
きみがいれば 木枯らしに勝てるさ ふたりで ずっと

 

おれは おれでありたかった 哀愁ただようあの町 
町の色は 透明だった オレンジ色の 田舎の景色
おれは おれであり続けるのか そして 夢を・・・・
 

廃墟であるおれは それらが 風のたよりに
スターゲイザー 冬の口笛 哀愁交差点 であることを
知った 朽ちかけた 廃墟の番人であった おれ
おれは おれであった 通り過ぎた 青春

 

おれは 朽ちかけた廃墟が なぜか好きだった
おれは赤煉瓦が ところどころ剥げ落ちた
その廃墟が いまでは
すっかり 裸になったからまつ林と 
まぶしい青空と光の風が
 
おや かさこそと 音をたてて 
忍び込む 恋人たちの影が

 

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