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「テレパシーな恋心」

 

ぼくが ステファニーと出会ったのは
赤レンガ造りの小さな廃墟の前だった
ステファニーは 自転車の一人旅の途中
ぼくは 灰色の瞳のステファニーが
なぜか 宇宙からの 訪問者のようにおもえたのです

 

どこかの国の映画だったか
夢に見た建物が
宇宙への交信基地だったという話があったような

 

ぼくは プレアデス星団という言葉に なぜか
懐かしいおもいを抱きながら
しばし ステファニーと 話すことなく
テレパシーで交信したのでした

 

「人間には 生まれかわりがありますが
あなたの星でもそうですか」

 

「はい わたしの星でもそうです でも
地球人として 生まれかわる人は多くはいません」

 

「あなたの星でも 愛という言葉はありますか」

 

「はい でも わたしたちの星では
ハート 心と心の交流を大切にします」

 

秋の陽が傾くのは早いです
競輪選手のようないでたちのステファニーは

 

「じゃ 目的地に着いたら 絵ハガキを送るからね」と

 

ぼくは 小さく 小さくなって行くステファニーの後ろ姿を
見送りながら

 

「この地球上の どこかで また 会えたらな・・・」

 

やがて 遠くに見える アルプスの山並の上の
白い雲が マジェンタ色に 染まりました

 

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